FACILITATE合同会社ファシリテート CONTACTお問い合わせ→

Top/Blog/2026-10-23

調べた

クラウドは雲ではなかった——攻撃を受けた湾岸のデータセンターと、秋田の計画

「AIはクラウドの向こうにある」と、私たちは何となく思っている。けれど、クラウドは雲ではなく、建物と電気と水とケーブルでできている。

その建物が、実際に攻撃を受けた。2026年3月、UAE(アラブ首長国連邦)にあるAmazonのデータセンター2か所が、ドローンで直接攻撃されたと報じられている。

雲のアイコンが、稲妻・水滴・ケーブルの3本の柱の上に乗っている図。AIが電気と水とケーブルに支えられていることを表している

確認できた事実

Al Jazeera(2026年10月13日)などによると、いま分かっていることは次のとおりだ。

  • 今年2月に始まった米国・イスラエルとイランの戦争のなかで、3月にAWSのUAEの施設2か所が、ドローンで「直接攻撃された」。バーレーンの施設の近くでも、物理的な被害があった
  • 地域全体で通信障害が起き、アブダビの銀行のアプリが一時止まった(銀行は、AWSの被害との関係を認めていない)
  • 9月になっても、AWSはバーレーンの複数の拠点とUAEの1拠点を復旧できていない。バーレーンにあった一部のデータは、「あらゆる手を尽くした」としたうえで、復旧できなかったと述べている
  • イランの革命防衛隊は3月、米企業17社とUAEのAI企業G42を、標的になりうるものとして挙げた
  • 10月には、イランの安全保障担当者が、戦争が再び起きれば、海底ケーブルやデータセンターが標的になりうると警告した
  • 現在は、6月の米イランの覚書以降、大規模な戦闘はおおむね止まっている。ただし、ホルムズ海峡では、船への攻撃が続いている

専門家の見方も紹介しておく。英国キングス・カレッジ・ロンドンのアンドレアス・クリーグ氏は、「攻撃はサーバーを壊さなくても、施設を動かなくできる」と述べている。電力や冷却、通信を断つだけで、止まるということだ。

AIは、物理の上に乗っている

大きな1つの建物から矢印が伸び、小さな5つの建物が間隔をあけて並んでいる図。1か所への集中から、複数の拠点への分散を表している

通信の面でも、弱い場所がある。調査会社TeleGeographyの推計では、ヨーロッパとアジアの間のデータ通信容量の90%以上が、紅海を通る海底ケーブルを通っている。世界のインターネット通信の約5分の1が、幅の狭いところで約26kmのバブ・エル・マンデブ海峡を通る、という計算だ。

だから、周辺国は代わりの道を作り始めている。9月には、カタールの通信会社Ooredooが、イラクを通って欧州へつなぐ地下ケーブルの契約を結んだ。マイクロソフトは、2030年までに中東の海底・陸上の通信に4億ドル超を投じると発表している。

UAEの大規模計画にも、影響が出ている。米国との約5ギガワットのAIキャンパス計画は続いているが、ロイターの報道(Newsweek Japan経由)では、1か所に集中させず、複数拠点に分散させる方向で見直しているという。防空の強化や、地下施設なども検討されていると報じられている。

秋田で、似た計画が動いている

ここで、日本の話をしたい。

秋田市のサーバー管理会社S2と、米国のAIスタートアップBitgritが、秋田県に最大500メガワット級のAIデータセンターを作る計画を進めている。事業費は約2兆円、稼働は早ければ2030年とされている。

そこに、アブダビの政府系ファンド「ムバダラ」が、出資を検討していると報じられている。最大1兆円とされるが、金額は確定しておらず、ムバダラはコメントしていない。 8月には、駐日UAE大使が秋田を訪れ、鈴木健太知事と沼谷純秋田市長に会った。ただし、合意は報じられていない。検討段階だ。

なぜ秋田なのかを説明した公式の発言は、確認できなかった。他社の報道では、洋上風力による電力が背景にあると書かれている。

ここで、はっきり書いておく。湾岸の攻撃と、秋田の計画に、因果関係があるとは、どこにも書かれていない。 同じ時期に起きている、別々の動きだ。ただ、遠い中東の戦争の話と、日本の東北の計画が、同じ「AIを動かす場所をどこに置くか」という流れの上にある。それは、おもしろい事実だと思う。

「海外で盛り上がっている産業」は、遠い世界の話に見える。けれど、その投資の行き先として、私たちの身近な場所が、すでに話題に上っている。

うちではどうするか

私たちはデータセンターを持つ会社ではない。けれど、AIを使う側として、持っておきたい視点がある。

AIは、ネットの向こうの魔法ではなく、どこかの建物と電気の上で動いている。その場所が止まれば、サービスも止まる。

だから、お客様のAI導入をお手伝いするときは、使うAIがどこで動いているのかを、先に確かめる。 そして、止まったときに、業務が止まらない形を、あらかじめ作っておく。大きな話に聞こえても、やることは、とても地味だ。


出典:Al Jazeera(2026年10月13日)/ロイター報道(Newsweek Japan・UAEの計画見直し)/DCD・Adnkronos・Yahoo Finance(秋田の計画・ムバダラ、2026年8月)/Digitimes(2026年8月24日)/TeleGeography(海底ケーブル・Al Jazeera引用)

記事一覧へ戻る相談する→
相談する→