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Top/Blog/2026-10-01

試した

AIが「まだ判断できない」と書いた日、公式文書はもう出ていた

先に、いちばん大事なことを書いておく。
あの会談は、日本を敵にする同盟の話ではなかった。
ホワイトハウスの公式文書を開いても、「同盟」という語も、日本への言及も無い。

ただ、そう読めてしまう言葉が並んだのは事実だ。
私はその見出しを見て、手が止まった。ここから書く。

星条旗と五星紅旗を背に、長机を挟んで向かい合う二人。机の中央には一束の書類が置かれている

起 ── 見出しを見て、手が止まった

2026年9月25日、中央日報日本語版の見出しはこうだった。

「共通の利益に集中」…トランプ氏、習氏の前で抗日「同盟」にまで言及

読売新聞は、トランプ大統領の言葉をこう伝えている。

「第2次大戦で、我々が共に戦った偉業を思い出そう。共通の利益に焦点を当てれば、多くの成果をあげられると確信している」
「共通利益の追求が、距離や相違を超えて両国民を結びつけ、第2次大戦で我々を同盟国にした」

同じ日の晩餐会で、習近平主席はこう述べたとNHKが伝えている。

「80年以上前、中米両国人民は肩を並べて、日本軍国主義の侵略者と戦った」

日本の同盟国の大統領が、中国の主席を前にして、日本と戦った歴史を持ち出して「同盟」と言った。
それが、私が驚いた中身である。

承 ── AIに整理させたら、正しかった

気になったので、AIに記事を読ませて、全体像を整理した資料を作らせた。
16の章に分かれた、よくできた資料だった。

「抗日同盟」という見出しについて、資料はこう整理していた。
第二次世界大戦で米中が共に戦った歴史への言及であり、いまの日本を標的にした同盟ではない、と。

これは正しかった。
そのうえで、この内容を外に出してよいかを、うちのAIに一次資料まで当たらせた。
ホワイトハウスの公式文書に、「同盟」という語は無い。日本への言及も無い。
中央日報は韓国系の媒体で、歴史に敏感な読者を持つ。「同盟」は媒体の見出しの言葉であって、合意文書の言葉ではない。

転 ── それでも、資料には二つ抜けがあった

一つ目。5日前に出ていた文書を、「これから確認すべきもの」として書いていた

資料には「現時点では判断できないこと」という章がある。
関税休戦の期間と対象品目。AI協議に拘束力があるか。
そして、今後はホワイトハウスのファクトシートを最優先で確認すること、と書かれていた。

その資料が作られたのは、9月30日だった。
ファクトシートが公開されたのは、9月25日である。

5日前に出ていた文書を、AIは「これから確認すべきもの」として書いていた。
中を開くと、こう書いてある。

  • 関税は、双方向でそれぞれ300億ドル分の品目を優遇する。農産物、魚介、木材、化粧品、医療機器。品目名まで公表されている
  • 石炭は最低1,000万トンの輸入契約。2027年と2028年
  • フェンタニルの前駆体は輸出規制。8月に21人が逮捕されている
  • 米国・ロシア・中国の三者で、軍備管理の交渉を提案している

そして、AIの項目がいちばん驚いた。

「AI」ではなく "super intelligence"(超知能)という語を使うことで合意した。

資料は、AIについては理念の表明に近い、と評価していた。
実際には、何と呼ぶかという所まで決めていた。
米中スーパーインテリジェンス対話という枠組みが作られ、次のやり取りの期限は今年11月と書かれている。

言葉の選び方が、国と国の合意事項になる。
AIという言葉が、それだけの重さを持ったということだと思う。

一方で、台湾、直行便、農産物の購入量は、この文書に記載が無い。
貿易休戦を2027年1月10日まで延ばしたという話は、複数の報道が伝えているが、公式文書には載っていない。
決まったことと、決まっていないことと、報道が言っていること。
この3つは、見出しからは見分けられない。

大きく開いた新聞の見出しと、その脇に置かれた小さな公式文書。黄色い印が付いているのは、小さい方だけ

二つ目。「当時の中国」が、いまの中国ではないこと

読売新聞は、同じ会談について、こういう見出しを付けていた。

第2次大戦に触れトランプ氏「米中は同盟国」、当時は中華民国…「抗日」巡る中国の言説補強する恐れ

第二次大戦で米国と共に戦った「中国」は、蒋介石が率いた中華民国である。
いまの中華人民共和国は、大戦が終わった4年後の建国だ。

AIが作った資料は、この点に触れていなかった。
歴史への言及は事実だ、といったんは正しく整理したうえで、「そこで言う中国は、いまの中国とは別の政府である」という一段が抜けていた。
それは、日本の新聞が見出しに立てるほど大事な一段だった。

結 ── 考えたこと

資料が悪かったのではない。
渡した材料の中では、AIは正確に整理していた。
足りなかったのは、材料の方だった。

AIは、自分が見ていないものを「まだ無いもの」として書くことがある。
そして、渡した材料に書かれていない一段は、抜けたまま出てくる。
これは間違いというより、そういう性質だと思っておいたほうがいい。

AIに任せて速くなるのは、読んで整理するところまでだ。
どの材料を読ませるか、いつ読み直すかは、人が決めるしかない。

うちではどうするか

AIに資料を作らせることは、これからも続ける。速いし、渡した材料の中では正確だ。
ただし、外に出す前には必ず一次資料を開く。これを決まりにした。
今回で言えば、ホワイトハウスの公式文書と、日本の新聞がそれにあたる。

AIの答えを疑うのではない。
AIが読んだ材料が、いまも最新か、足りているかを疑う。
この2つは、まったく違う。


出典:中央日報日本語版(2026年9月25日)/読売新聞(2026年9月25日)/NHK(2026年9月24日)/The White House「Fact Sheet」(2026年9月25日)

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